本編は「経営の勘どころ」の第三回目、‟商い編”です。
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‟商い”とは古い表現のようですが、私自身は好んで使っています。
所謂、「ビジネス展開」のことを指しています。
‟商い”にこだわるのは、日本の中で長年、培ってきた商いの精神を大切にしていきたいと考えているからです。
特に地域密着型の商売をしている中小企業にとって、今でも日本の商人道は大いに参考になると思っています。
まさに“温故知新”、そして、“不易流行”です。
では、商いについての‟勘どころ”を記してみます。
「商人の在り方」、言い換えると「ビジネス展開における視座」と言ってもよいでしょう。
私の経験から何を重視すべきかを6つほど挙げました。
《商人の在り方・6つの視座》
- 在り方-1:商いの王道とビジネスの覇道、二律背反とせよ
- 在り方-2:理念は存在価値、戦略は成長手段
- 在り方-3:才は必要要件、心は絶対条件
- 在り方-4:最重要、最優先すべき顧客は社員だ
- 在り方-5:すべては足元から始まる
- 在り方-6:胆力は三つの場を乗り越える
その心-1:商いの王道とビジネスの覇道、二律背反とせよ
・商いは王道をいくべし。よって‟商人道“(精神性)を尊ぶこと。
ビジネスには覇道が必然的にともなう。
よって‟マネジメント”(科学性)が必須だ。
この二つの要素をバランスよく持っていることが“正しく合理的に成長”できる。
その心-2:理念は存在価値、戦略は成長軌道
・“商いの心”と“商いの才”は別世界に存在する。
そこに因果関係はない。
商いの心は“経営マインド”として普遍性を持って発揮される。
一方、商いの才は“事業センス”として状況に応じ瞬間に発揮される。
前者は存在価値を問う‟理念”に長け、後者は成長軌道を追う“戦略”に長けていることが望ましい。
その心-3:才は必要要件、心は絶対条件
・‟商いの才”は儲けをもたらす‟能力の一つ”となる。あった方がよい。
“商いの心”はその儲けを安定させていく‟持続力の一つ”となる。
なくてはいけない。
‟商いの心”とは正しい儲け方にこだわることを意味し、この正しさがあってこそ会社は脱線せず清く発展できる。
「論語と算盤」で言えば、論語が心、ソロバンが才とも言えるだろう。(渋沢栄一が提唱した「道徳経済合一」)
その心-4:最重要、最優先すべき顧客は社員だ
・商売というものは、‟まずは社員に”、次にお客様と社会に支持されなければ繁栄はしない。
第一の顧客はお客様ではなく社員である。
第二の顧客がお客様と言える。
なぜなら、社員はお客様に提供している商品、サービスをつくった本人であり、その社員こそがその商品、サービスを信頼し、支持し、自らが購入したいと思ってこそ、お客様に販売してよいと考えることが理に適っている。
その心-5:すべては足元から始まる
・商売が上手くいかなくなるケースは、それは外部への適応が上手くできなかったときか、もしくは内部における不和が原因となっているか、どちらか一つか両方かである。
おおよそ、事の発端、根源は‟内部の崩壊”によるところがほとんど。
その心-6:胆力は三つの場を乗り越える
・商いには社長の精神力が大きく試される。
なぜなら、商売において社長の心が折れては全てを失うからである。
その精神力の中でも‟胆力”がものをいう。胆力とは‟復元力“のことである。
そして、この胆力は商売における三つの場「正念場」、「修羅場」、「土壇場」を乗り越えるために必要な力。
但し、この三つの場は、商売の境地、極意を知るために大切な経験である。
用語解説
- 正念場:本領を発揮すべき重要な場
- 修羅場:激しい争いの場
- 土壇場:切羽詰ったぎりぎり最後の場
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