社長や上司たる者はバカなふりをすべし

会社の会議でわざと的外れな発言をする。

物事をあえて忘れたふりをする。

部下から何か提案されても、意図的に判断に迷ったふりをする。

このように、私は常々

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「社長や上司たる者はバカなふりをすべし」

と思っています。

私は社長であり、幹部にとっては上司ですが、社長という立場から以下、解説します。

もし、社長が頭の良さを露骨に出していたとします。

するとどうなるでしょうか?
社長にとっては幹部ほか部下の一挙手一投足が物足りなく思えてしまい、ついつい

「こうすればよい、ああすればよい!」

と口を出すことになります。

ついには、アドバイスを超えて指示・命令に至る。

所謂、マイクロマネジメントに走り出すわけです。

このような様相は、社長の言っていることの正しさを証明するための行為になるのです。
いかに社長が賢く、頭がよいかを否応なしに周囲に認めさせることになってしまう。
これでは幹部や社員の考えや行動を頭から否定することにもつながります。

そうなってしまうと賢い社長の下にいる幹部や社員は、現場に問題が発生した時など、

「どうせ俺たちが考えてやろうとすることは、社長によって間違っていると指摘されるに違いない」

と考えてしまい思考停止状態になります。
これでは人材は育ちません。

つまり、

「頭の良さを見せつける社長の下では、人は育たない!」

と言いたいのです。このことは上司と部下の関係にも当てはまるでしょう。

事実、このような弊害をあらかじめ予測してか、私の周りにはバカなふりをしている社長がたくさんいます。賢明だと思います。

現場の問題発生時にあえて見て見ぬふりをする。すぐには介入しない。
また、部下から問題提起を直接受けた時には

判断に迷ったふりをする。

さらに、部下からの提案に対しては、

間違っていると思っていても、あえてトライさせ失敗を経験させることによって育てようとするのです。

時に、物事をあえて忘れたふりをし、会議ではわざとピンボケの発言をしたりする。

これらすべて計算づくとは言いませんが、あえての“バカなふり作戦”なのです。

ですから、幹部や社員から時々、

「社長は何を考えているかわからない」
「社長は忘れっぽく朝令暮改が多い」
「もっと言えば、頼りにならない社長だ」

とか、思われることもあるでしょう。

その結果、幹部や社員は自己判断を強め、責任感と行動における自律性を否応なしに持たざるをえない。
結構、高度な人材育成だと思いませんか?

また、社長自身の仕事への取り組みは一心不乱。
尋常ではない。時に超人的、といった姿勢が尊いと思っています。

ここに本物のバカの真髄が見え隠れする。

このバカさ加減こそ強烈なリーダーシップ、つまり、周囲を巻き込み引っ張っていく力となるのです。

特に中小企業の場合、このパワーがなければ求心力は発揮されないでしょう。

一心不乱に物事に取り組むとは、会社に対する想い、社員に対する想い、そして、顧客に対する想いが無心であり乱れない、一貫していてぶれない状態を言います。

この姿勢は幹部や社員にとって、はじめのうちは頑固とか、融通が利かないとか、もっと言えば堅物などと見られがちです。
しかし、ついには本物と分かり、認め、尊敬に変わっていきます。

これぞ、理想とする‟本物のバカ社長像”と思っています。

尋常でないとは常軌を逸した状態なのですが、これは、会社の危機時やここ一番の勝負時などに、驚異的な思考力と行動力を持って事に当たる姿を指しています。これはビジネスの展開においてとっても大切な成功要因となるでしょう。

超人的とは、理屈を超えた判断が瞬時にとれること。
ときに奇想天外だったり、摩訶不思議な考えを披露する。
一見、常識を逸した考えなのですが、やってみると的を得ているといった瞬発力や創造性なんですね。

経営者にはこのように、“一心不乱”で“尋常でない”、そして、“超人的”と思われる非凡さがなくてはいけない。

この非凡さを指して本物のバカと呼んでいます。

よく、重要会議の決断時の基準において、

「社長以外の全員が反対したら事を進めよ。

もし、全員が賛成したら事を止めよ」

と言われることがあります。

つまり、社長以外は常識人で無難な判断しかできない。
ところが、非凡な社長は非常識人で超人的な判断をする。

このことも本物のバカのなせる業と言ってよいでしょう。 

また、企業の成長源であるイノベーションを考えてみればわかることです。

無から有を創り出すこのイノベーションというものは“一心不乱”で“尋常でない”、そして、“超人的”なムチャな世界でしか実現できません。

バカなふりと本物のバカは“アントレプレナーシップ”、もしくは“ベンチャー魂”に通じているのです。

頭が良すぎると先々が読めてしまい、動く前から結論を見出してしまいがち。

その結果、自らの行動自体を制止してしまう。
つまり、確率論などで自らの経営判断を客観視してしまったりするのです。

これは、主観的な思いや気概を削ぐことが多い。

私流に言えば、「新たな物事が成り立つためには理屈を超えなければならない」ということです。

社長たるもの、バカなふりをすべし。
社長たるもの、本物のバカになるべし。(本当のバカでは困るが・・・)

なぜならば、

「バカなふり」は、人材育成上、リーダーにとって必要なこと。
「本物のバカ」は、ビジネス上、経営者にとって必要なこと。

そう思うからです。

この「バカなふりをする」「本物のバカになる」になることは、社長にとって時に辛くもあり楽しくもあるのです。

<文/つのだアントレ>

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この記事を書いた人

中小企業の社長に向けて、「毎年黒字企業」になる方法を発信しています。20代で株式会社3社を起業。約35年間、経営者として活動中。国立大学でも客員教授を約20年間務めています。バンドでギターを弾きまくってます。

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