- 視点—1:「人は信じよ!しかし、仕事は信じるな!」は経営の極意
- 視点—2:「クールヘッド、ウォームハート」はリスクマネジメントの視点となる。
❖部下の人格(存在)と仕事(成果)を分けて捉える
唐突な言い方ですが、
「人は信じよ!しかし、仕事は信じるな!」
この言葉に“経営の極意”が秘められているように感じます。
この言葉、私の経営の勘どころとして常に念頭にありました。
「人は信じよ!」とは、
という意味です。
つまり、その人物にどのような長短があろうと、仕事において不出来なことがあっても、人格は全面的に信頼を寄せる。いわゆる“性善説”の上に立つということです。
しかし、「仕事は信じるな!」とは、一概に性悪説に立っているとは言いませんが、
という意味です。
なぜなら、部下の仕事結果はいつも経営者の期待に沿うことばかりとは限りません。
保証もさせません。なぜなら、それぞれの人材にはキャリアの違い、能力、適性の違いがあります。また、仕事の難易度も、その都度、個々のケースによって異なるわけです。
ですから毎回、「その人物の仕事成果を手放し(無条件)に信じてはいけない」と自身に言い聞かせているのです。
ある種、‟リスクマネジメント”の考え方に立っているわけです。
時には、上司の期待通りに100%の成果を出すこともあるでしょう。
また時には、明らかに期待外れの場合もあるでしょう。
つまり、部下の成す仕事の結果予測については、
ということです。
冷静な頭脳、されど温かい心
とは、部下には申し訳ない(口には出して言えません)と思いますが、これが経営者としての正しい捉え方と思っています。
この捉え方は
「クールヘッド、ウォームハート」(Cool Head but Warm Heart)
に通じるものでしょう。
この言葉はイギリスの経済学者・アルフレッド・マーシャルのものですが、訳としては
勿論、本人を目の前にしては全幅の信頼を寄せた態度をとります。
まったく疑いのない期待感も示します。
そして、強い動機付けを与えるようにします。
これはモチベーション上、当たり前ですが、一方では冷静に最悪のシナリオを想定しておきます。
これを専門的にはアンビバランスフィーリング/ambivalence feelingと言うそうです
そうでなければならないのです。
なぜなら、社員が失敗して万が一、多大な損害が発生したり、最悪、会社が倒産しても、その責任は失敗した社員が取れませんから…。
極端な話かもしれませんが、究極的にはそこに辿り着きます
このような捉え方は、社員観は“性善説・楽観論”で、部下の仕事観は“性悪説・悲観論”という二律背反の概念を意味しています。
なかなか使い分けが難しいかもしれませんが、このような二面性を持った人格を身につけること自体、経営者を演じるという意味では大切なことと思います。
経営者としては辛くもあり、楽しくもありますが・・・。