中小企業にとって人材育成をどう捉え実践していけばよいのか?
人材の確保は企業経営にとって“生存問題“”。
そして、人材の育成は企業発展にとって‟死活問題”です。
- 生存問題とは“企業のゴーイングコンサーン”を意味します。
- 死活問題とは“企業の栄枯盛衰”を意味します。
*ゴーイングコンサーン(going concern):企業が将来にわたって無期限に事業を継続することを前提とする考え方のこと
部下育成における“勘どころ”には心得が必要だ
早速、人材育成における‟勘どころ”について大切なポイントを「心得 7カ条」として示します。
上司が部下をどう指導・育成していけばよいかに焦点を絞りました。
《部下育成の心得 7カ条》
- “かまい過ぎ”はやめよ。むしろ、ほどほどに放置せよ
- 上司の個人技(属人)ではなく、組織技(仕組み)に重点を
- 能力を伸ばすこと。それ以上に資質を育むこと
- 「辞めない会社をつくる」のではなく「やりがいある会社」を目指せ
- 組織である以上、信賞必罰を重んじること
- 「仕事には厳しく、人間的には温かく」をモットーに
- 部下育成の要諦。それは「褒めると叱る」のバランスと質だ
心得-1:“かまい過ぎ”はやめよ。むしろ、ほどほどに放置せよ
一生懸命、手取り足取り部下を指導すれば期待通りに育つとは限らない。
“かまい過ぎることが仇となる”ことはよくある。
むしろ、いい案配に放っておいた方が、自主性が促進され人は育つものだ。
- 「あれはどうなった?」
- 「これはこうしろよ!」
- 「あれは終わっているか?」
- 「これはするなよ!」
といった、口を開けば指示・命令と確認の言葉だけ。
このようなマイクロマネジメントは正に‟かまい過ぎの世界”。
こうなると、部下はついてこない.
心得-2:上司の個人技(属人)ではなく、組織技(仕組み)に重点を
部下育成を直属の上司の個人技に頼りすぎることはとても危険なことだ。
人を育てるのはあくまでも会社の責任であり、組織技によって育てるべきである。
実践的な育成プログラムがあって上司はそれを導くこと。
このような仕組みがあってこそ、部下は確かな成長と遂げると心得よ。
心得-3:能力を伸ばすこと。それ以上に資質を育むこと
人材育成の初期段階は能力開発(知識とスキルなどの向上)を優先してよい。
その後、キャリアが積み上がり、部下を持つ段階になるとその人材は資質が問われることになる。
資質とは、その人の‟人格”と‟人間性”を指す。
分かり易く言えば、その人の「モノの見方」、「感じ方」、そして、「行動の在り方」である。
部下もいずれ人の上に立ちリーダーシップを発揮していくとなると資質が能力以上に重要となることを心得よ。
心得-4:「辞めない会社をつくる」のではなく「やりがいある会社」を目指せ
部下を育てる際、「定着をこだわり過ぎるな」、退職もまた“必然”と考えろ。
“辞められたら困る”という感情が強い上司の下ではひ弱な人材しか残らない。
まして、強い芯のある人材は育たないだろう。
辞めない職場をつくるのではなく、やりがいのある職場をつくることだ。
ただし、慢性的に退職者が出ることを当然とはするな!
必然と当然では意味が違う。
心得-5:組織である以上、信賞必罰を重んじること
‟信賞必罰”を重んじること。簡単に言えば
ということです。
頑張っていない者、仕事のできない者を冷遇するということではない。
この人たちには研修、育成の機会を増やすまで。
また、ミスが多い者、間違ったことをした者には規則にない処罰は与えてはいけない。正すのみ。
組織が健全に機能するための原則は
どのような状況においても“規律”と“秩序”が基本。
この基本の土台が信賞必罰となる。
「カタチに力が宿る」ということがある。
規律、秩序がほどよく保たれていると人は真っすぐ育つと心得ること。
ウェルビーイングな経営を目指す際もそこが肝となる。
心得-6:「仕事には厳しく、人間的には優しく」をモットーに
人材育成においての緩急、
「仕事には厳しく、人間的には優しく」
は善である。
しかし、「アメとムチ」は悪と心得よ。
アメとムチは支配と懐柔を意味し人材を社畜化に向かわせる。
しかし、人間関係においては‟中庸”が肝要である。
英国の著名経済学者、アルフレッド・マーシャル(ケンブリッジ大学教授)の言葉にあった
「ウォームハート、クールヘッド」「Coolheads but Warmhearts」
つまり「冷静な頭脳、されど温かい心」。
この言葉は「仕事には厳しく、人間的には優しく」に通じる。
心得-7:部下育成の要諦。それは「褒めると叱る」のバランスと質だ
褒めるときは全人格から各論へ、叱るときは業務のみに部分限定すること。
褒めるときの最大の注意点は、本人が真に頑張った時のみ褒めることだ。
叱るときはここ一番に限る。
そして、事柄の限定、場所の限定、時間の限定を設定してから諭すように…。
叱るときはその部下の人生を背負う覚悟をもってせよ。